【大阪】農業を変えるドローン農薬散布の始め方｜メリットや手続きを解説

農薬散布作業効率の劇的な向上と時間短縮

農薬散布にドローンを導入する最大のメリットは、作業効率の飛躍的な向上です。従来の手作業による農薬散布では、1ヘクタールの農地へ散布するのに数時間を要していたところ、ドローンを使用すれば約10分から15分程度で完了した事例があります。

特に水田や果樹園など、広範囲にわたる農地を管理している場合、ドローンによる散布は時間的コストを大幅に削減できます。従来の動力噴霧器を使った地上散布では、重い機材を持ちながら農地を歩き回る必要がありましたが、ドローンならば遠隔操作で効率的に散布作業を行えます。

身体的負担の軽減と安全性の向上

農薬散布作業は農業従事者にとって、大きな身体的負担となっています。重い噴霧器を背負って長時間作業することは、腰や肩への負担が大きく、特に高齢化が進む農業現場では深刻な問題です。ドローンを使った農薬散布では、このような身体的負担を大幅に軽減できます。

操作は地上からリモコンで行うため、重い機材を持ち運ぶ必要がありません。また、農薬に直接触れる機会も減少するため、健康面でのリスクも低減します。従来の散布方法では、風向きによっては自身に農薬がかかってしまう危険性がありましたが、ドローンならば安全な距離を保ちながら作業を行えます。

均一で精密な散布による効果の最大化

ドローンによる農薬散布のもう一つの大きなメリットは、散布の均一性と精密性です。手作業や従来の散布機では、どうしてもムラが生じてしまい、散布が不十分な箇所や過剰な箇所が発生しがちでした。しかし、ドローンはGPSやセンサーを活用し、プログラムされたルートに沿って一定の高度と速度で飛行するため、極めて均一な散布が可能です。

この精密性により、農薬の使用量を最適化できます。必要な場所に必要な量だけを散布することで、農薬コストの削減につながるだけでなく、環境への負荷も軽減できます。また、ドローンのダウンウォッシュ（プロペラによる下向きの風）効果により、農薬が作物の葉の裏側まで行き届きやすくなります。これにより病害虫防除の効果が高まり、作物の品質向上にも貢献します。

必要な機体性能：積載重量

農薬と機材を合わせた重量に耐えられる機体を選ぶ必要があり、多くの農業用ドローンは10キロから30キロ程度の積載重量に対応しています。飛行時間も作業効率に直結する要素で、バッテリー1本あたり10分から20分程度の飛行が標準的ですが、予備バッテリーを複数用意することで連続作業が可能になります。

必要な機体性能：散布幅

農地の規模を考慮し、機動性と散布能力のバランスが取れた機体を選ぶことが大切です。散布幅の目安としては3～4mです。GPS機能や自動飛行システムを搭載した機体であれば、より精密な散布が可能になります。さらに防水・防塵性能も必須で、農薬や屋外での使用に耐えられる耐久性を持つ機体を選ぶことが大切です。

操縦に必要な資格と特殊な技能

ドローンで農薬散布を行うためには、特殊な資格と知識が必要です。2022年12月から施行された改正航空法により、農薬散布を含む特定の業務用ドローン操縦には、国家資格である「無人航空機操縦者技能証明」の取得が推奨されています。

農薬散布に特化した、農林水産航空協会認定の技能認定証も重要です。この認定を取得することで、農薬散布に関する専門的な知識と技能を証明でき、安全かつ効果的な散布作業が可能になります。また、農薬に関する知識も不可欠です。農薬取締法に基づく適切な農薬の選定、希釈方法、散布量の計算などを理解する必要があります。

さらに、気象条件の判断も必要な技能で、風速や風向き、気温、湿度などを考慮して散布に適した条件を見極める能力が求められます。加えて、機体のメンテナンス技術も特殊な知識の一つです。散布後の洗浄、プロペラやモーターの点検、バッテリーの管理など、適切なメンテナンスを行うことで機体の寿命を延ばし、安全な運用を継続できます。

航空法に基づく飛行許可申請の手続き

ドローンによる農薬散布を行うためには、まず航空法に基づく飛行許可申請が必要です。農薬散布は「危険物の輸送」および「物件投下」に該当するため、国土交通省への申請が義務付けられています。散布作業の予定がある場合は、余裕のあるスケジュールで申請しましょう。

飛行許可を取得した後も、飛行実績の報告義務があります。定期的に飛行記録を国土交通省に提出する必要があるため、日々の飛行データを正確に記録・管理することが求められます。

農薬使用に関する法規制とコンプライアンス

ドローンでの農薬散布には、航空法だけでなく農薬取締法や食品衛生法など、農業に関連する法規制も関わってきます。農薬取締法では、使用する農薬の種類・使用量・使用方法・使用時期などが厳格に定められており、これらを遵守することが法律で義務付けられています。ドローンで散布可能な農薬は限定されており、「無人航空機用」または「無人ヘリコプター用」として登録された農薬のみ使用できます。

また、散布区域の周辺住民への事前通知も必要です。特に住宅地に近い農地で散布を行う場合は、散布日時や使用する農薬について近隣に周知し、理解を得ることがトラブル防止につながります。